研究テーマ − 研究紹介 《1/3 MCAルールの検証》

研究の背景

急性期脳梗塞における血栓溶解療法の適応決定にあたっては,出血合併症を最小限におさえるためにも,虚血範囲の評価が重要であるが,臨床的状況から迅速かつ簡便な判定法が必要とされる.

判定にあたっては,初回CTでMCA領域の1/3以上に初期虚血変化がみられる場合には合併症が高率であるとする立場から,一般に1/3 MCA ルールと言われるが,これまでにATLANTIS [1],STARS [2], ASPECTS [3]などの大規模研究において,いくつかの評価法が提唱されている.それぞれに特徴があるが,いずれも評価法が複雑であったり,MRIでの使用に不適であるなど,日常診療で使いやすいものは見あたらない.

ASIST-Japan の取り組み

ASIST-Japanでは,各種の1/3 MCAルールの客観的な再評価を行ない,日常診療において,CTでもMRIでも使用できる新たな評価法を提案している.これは,ASPECTSを土台として,白質(放線冠)にも評価領域を追加し,虚血性変化が認められる領域の数を減点法で算定し,11点満点中8点以下をMCA領域の1/3以上と判定するものである.

現在,これに基づく読影実験が進行中であり,その結果についてはまもなく報告できる予定である.


ASPECTSを土台として,放線冠(W)に評価領域を加えている.11点満点として,虚血性変化が認められる領域の数を減点し,8点以下をMCA領域の1/3以上と判定する.

典拠資料
1. Clark WM, et al. Recombinant tissue-type plasminogen activator (Alteplase) for ischemic stroke 3 to 5 hours after symptom onset. The ATLANTIS Study: a randomized controlled trial. Alteplase Thrombolysis for Acute Noninterventional Therapy in Ischemic Stroke. JAMA 1999;282:2019-26
2. Albers GW, et al. Intravenous tissue-type plasminogen activator for treatment of acute stroke: the Standard Treatment with Alteplase to Reverse Stroke (STARS) study. JAMA 2000 283:1145-50
3. Barber PA, et al. Validity and reliability of a quantitative computed tomography score in predicting outcome of hyperacute stroke before thrombolytic therapy. ASPECTS Study Group. Alberta Stroke Programme Early CT Score. Lancet 2000 13;355(9216):1670-4